OTC類似薬とは、市販されているOTC医薬品(一般用医薬品・要指導医薬品)と有効成分や効能・効果が類似する医療用医薬品のことです。
全面的な保険適用除外は見送られたものの、対象となる薬剤には原則として薬剤費の4分の1を「特別の料金」として追加負担する仕組みが導入されます。
厚生労働省は令和8年度(2027年3月)の実施を目指し、対象範囲や配慮すべき患者の整理を進めています。
本記事では、OTC類似薬の定義や保険適用除外が議論された背景、追加負担の計算方法、対象となる77成分・約1100品目について解説します。
※本記事は、2026年7月14日現在の情報をもとに記載しています。
OTC類似薬とは?
OTC類似薬に明確な定義はありませんが、一般的には市販されているOTC医薬品(一般用医薬品・要指導医薬品)と有効成分や効能・効果が類似する医療用医薬品を指す言葉として使われています。
医療用医薬品には、先発医薬品だけでなくジェネリック医薬品(後発医薬品)も含まれます。たとえば、患者が「湿布」として使用する鎮痛消炎剤には、ジェネリック医薬品でありながらOTC類似薬の対象となる製品もあります。
なお、漢方薬が対象に含まれるかについては、最終的な公的リストは現時点で公表されていません。ただし、定義を踏まえると成分や効能・効果が一致する漢方製剤も対象になる可能性はあります。
OTC類似薬とOTC医薬品の違い
OTC類似薬とOTC医薬品の基本的な違いは、処方箋の有無と保険適用の有無にあります。
OTC類似薬は、医師の処方箋に基づいて調剤される医療用医薬品です。一方で、OTC医薬品は処方箋なしで薬局やドラッグストアで購入できますが全額自己負担となります。また、OTC医薬品は患者自身の判断での使用が前提とされているため、添付文書には一般消費者向けの説明が記載されている点も特徴です。
医療用医薬品のうち、OTC医薬品と成分・投与経路及び最大用量が同一であるものがOTC類似薬の対象です。ただし、成分によっては医療用医薬品とOTC医薬品で制度上の位置づけや使用場面が異なり、効能・効果が一致しない場合があることを留意しなければなりません。そのため、OTC類似薬だからといって、単純に保険適用から除外することは難しいとされています。
こうした背景から、厚生労働省の検討会では効能・効果がどの範囲で一致し、どの範囲で異なるかを成分ごとに検討する議論が続いています。2026年6月25日に実施された「第1回 OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」では、対象医薬品に係る効能・効果の整理の考え方などについて意見が交わされました。第2回・第3回の検討会(非公開)では、こうした考え方や論点を踏まえた成分別の技術的検討が進められています。
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OTC類似薬の対象は77成分・約1100品目
OTC類似薬の対象は、OTC医薬品と成分・投与経路が同一で1日の最大用量が異ならない医療用医薬品を機械的に選定する考え方に基づき、77成分・約1100品目とされています。
対象となり得る領域としては、鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌などが挙げられています。
※詳細をまとめた一覧表は記事の最後に記載しております。
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OTC類似薬の代表例
OTC類似薬の代表例として挙げられるのが、医療用医薬品として処方される「ロキソニン錠60mg」と、OTC医薬品として販売される商品名「ロキソニンS」です。有効成分として、いずれもロキソプロフェンナトリウム水和物(無水物として60mg相当)が含有されています。
製品によっては1錠あたりの含有量も同じですが、医療用医薬品は保険が適用される一方、OTC医薬品は処方箋を不要とするかわりに全額自己負担となる点が異なります。成分や含有量が同じであっても、保険適用の有無によって患者の負担は大きく変わる可能性があるでしょう。
OTC類似薬の保険適用除外はいつから?
OTC類似薬の全面的な保険適用除外は見送られたものの、令和8年度中(2027年3月)の実施を目途に「特別の料金」として追加負担する新たな仕組みの導入が進められています。2026年5月29日には「健康保険法等の一部を改正する法律」が成立し、制度創設の根拠となる法整備は整いました。
対象医薬品に係る効能・効果の整理の考え方や別途の負担を求めない者などの考え方については、検討が続けられています。
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なぜOTC類似薬が保険適用見直しの対象になった?
OTC類似薬の保険適用の是非について議論された背景には、次の2点が挙げられます。
1.医療費の増大と財政圧迫
日本の医療費は高齢化や医療技術の高度化により年々増加し、令和5年度の概算医療費は約47.3兆円に達しました。こうした財政負担の増大に対応するため、軽度な症状に対する医薬品については、保険適用の見直しが求められてきました。
2.セルフメディケーションの推進
政府は、軽い症状にはOTC医薬品を活用して自分で健康管理を行う考え方を推進しています。2017年には「セルフメディケーション税制」も導入され、OTC医薬品の購入に対する所得控除が可能となりました。
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追加負担の計算方法
「特別の料金」は、対象となる医薬品の薬剤費に対して4分の1を患者が追加で負担する仕組みです。従来の自己負担割合に、この特別の料金が加算される形になります。
例)薬剤費が1000円で3割負担だった場合
現状は300円を患者が支払います。しかし新たな制度では、300円に加えて薬剤費の4分の1にあたる250円が「特別の料金」として加わり、合計で550円が自己負担となる計算です。
実際の薬の値段でみると、解熱鎮痛薬(5日分)の医療用医薬品は、見直し前は薬剤料のみで45円程度だったものが、見直し後は72円程度になるとされています(OTC医薬品の場合は約500円)。
厚生労働省は、この見直しによって年間約900億円の医療費削減効果を見込んでいます。今後は対象範囲の拡大や、特別の料金の負担割合の引き上げについても検討が続けられる見通しです。
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「特別の料金」の適用除外について
対象外として配慮が検討されているのは、小児、がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱える方、低所得者、入院患者、長期使用が医療上必要な患者などです。
小児は発達段階に応じた受診機会を確保する観点から対象外とする方向で検討されています。がんや難病、慢性疾患の患者は代替のOTC医薬品で対応困難なケースを対象外とする方向で検討中です。
厚生労働省の案では、治療中のがん患者については、治療に関連して対象薬を使用する場合は保険適用除外の対象外(=保険適用を継続)としています。難病患者についても同様に、指定難病の患者であり、その難病の治療に関連する薬を使用している場合は対象外です。
入院中の薬剤や、処置・手術と一体不可分な範囲の薬剤についても配慮する方針です。低所得者には過度な自己負担を避ける特例措置が検討されており、医師が長期使用を医療上必要と判断した場合も適用除外となる想定です。
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OTC類似薬の保険適用見直しにおける課題
1.必要な受診の確保を前提とした見直し
市販薬で対応できる軽い症状にも保険が使われると、他の被保険者との公平性に課題が生じるため、薬自体は保険適用を維持しつつ、薬剤費の一部を保険給付の対象外とする仕組みが提案されています。低所得者や長期療養中の患者への配慮も必要とされています。
2.OTC医薬品の添付文書「服用しないこと」の記載をどう整理するか
高齢者、疾患、症状、併用薬制限、性別、妊婦・授乳婦などさまざまな内容が含まれるため、記載の趣旨ごとの整理が必要とされています。特にステロイド外用薬は、長期連用の「長期」を月単位と捉え、慎重な判断が求められています。
3.患者団体ヒアリングから見えた懸念
がん患者の中には疼痛治療のために最大量のアセトアミノフェンやロキソニンテープを使用する方もおり、アトピー性皮膚炎では全身に軟膏を毎日塗る必要があるなど、保険適用除外になれば患者の負担は相当重くなるとの声が上がっています。
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対象となるOTC類似薬・約1100品目一覧
厚生労働省は2025年12月25日の社会保障審議会医療保険部会で、77成分の内訳を示しました。非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)のイブプロフェンやステロイド剤のデキサメタゾン、抗アレルギー剤のフェキソフェナジン塩酸塩、解熱消炎鎮痛剤のロキソプロフェンナトリウム水和物などが含まれています。
| 用途 | 有効成分 |
|---|---|
| 抗ウイルス薬 | アシクロビル 、ビダラビン |
| 抗アレルギー薬 | アシタザノラスト水和物、エピナスチン塩酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン、ベポタスチンベシル酸塩、ペミロラストカリウム、ロラタジン |
| ビタミン剤 | アスコルビン酸、トコフェロール酢酸エステル |
| 鎮痛鎮痒収斂消炎剤 | アンモニア水 |
| 抗真菌薬 | イソコナゾール硝酸塩、オキシコナゾール硝酸塩、クロトリマゾール、テルビナフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩、ミコナゾール硝酸塩 |
| 殺菌消毒剤 | イソプロパノール、エタノール、オキシドール、希ヨードチンキ、クロルヘキシジングルコン酸塩、次亜塩素酸ナトリウム、消毒用エタノール、ベンザルコニウム塩化物、ポビドンヨード、無水エタノール、ヨウ素 |
| 胃薬 | イトプリド塩酸塩 |
| 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、フェルビナク |
| 非ステロイド系消炎鎮痛剤 | イブプロフェンピコノール |
| 鎮痛消炎剤 | インドメタシン、サリチル酸メチル・dl-カンフル・トウガラシエキス、サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル、サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル・グリチルレチン酸 |
| 去痰薬 | L-カルボシステイン |
| 点鼻用血管収縮剤 | 塩酸テトラヒドロゾリン・プレドニゾロン |
| 抗生物質・副腎皮質ホルモン配合剤 | オキシテトラサイクリン塩酸塩・ヒドロコルチゾン |
| 皮膚保護剤 | オリブ油 |
| 抗生物質 | クロラムフェニコール、クロラムフェニコール・フラジオマイシン硫酸塩・プレドニゾロン |
| 総合感冒剤 | サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩 |
| 寄生性皮膚疾患剤 | サリチル酸 |
| 制酸・緩下剤 | 酸化マグネシウム |
| 収れん・消炎・保護剤 | 酸化亜鉛 |
| 痔治療薬 | 静脈血管叢エキス |
| 溶解剤 | 精製水 |
| 胃腸薬 | 炭酸水素ナトリウム |
| カルシウム配合剤 | 沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム |
| 消炎薬 | チンク油 |
| ステロイド | デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル・フラジオマイシン硫酸塩 |
| 口内炎・舌炎薬 | トリアムシノロンアセトニド |
| 皮膚軟化剤 | 尿素 |
| 軟膏基剤 | 白色ワセリン |
| 矯味剤 | ハチミツ |
| 緩下剤 | ピコスルファートナトリウム水和物 |
| 便秘薬 | ビサコジル |
| 口腔用殺菌消毒剤 | 複方ヨード・グリセリン |
| 滋養強壮薬 | ブドウ酒 |
| 頻尿・残尿感薬 | フラボキサート塩酸塩 |
| 血行促進・皮膚保湿剤 | ヘパリン類似物質 |
| 止瀉剤 | ベルベリン塩化物水和物・ゲンノショウコエキス |
| 眼科用剤 | ホウ砂 |
| 眼洗浄・消毒薬 | ホウ酸 |
| 高脂血症薬 | ポリエンホスファチジルコリン |
| 乳幼児用便秘薬 | マルツエキス |
| アレルギー性鼻炎治療薬 | モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物 |
| 解熱消炎鎮痛剤 | ロキソプロフェンナトリウム水和物 |
特別料金の対象となる医薬品の成分一覧(案)|厚生労働省
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【厚労省】OTC類似薬77成分示す‐来年3月施行、法改正へ|薬事日報
まとめ:OTC類似薬が患者・医療機関へ与える影響は?
OTC類似薬が患者へ与える影響としては、自己負担が増えることで慢性疾患のある方への経済的影響が大きくなる可能性が考えられます。軽い症状で受診を控える動きが出る一方、セルフメディケーション意識の高まりも期待されています。
医療機関への影響としては、軽症患者の減少により重症患者への医療資源の集中が進む一方、収入減少につながる可能性もあります。薬局やドラッグストアには、適切な受診を促す役割がこれまで以上に求められそうです。今後も対象範囲や配慮すべき基準について、最新情報の確認が必要になるでしょう。
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