12日に医師法違反(無資格医業)の疑いで逮捕者が出た。過去に、【緊急情報】広告違反で人が死ぬ(2008年07月23日記事)で取り上げた事件に関しての再逮捕である。前回の論点は、「広告違反」であったが、今回は薬事における医師の立場に焦点を絞りたい。
例えば、医薬品等適正広告基準(昭和55年10月9日薬発第1339号、改正平成14年3月28日医薬発第0328009号)で次の条文がある。
5 医療用医薬品等の広告の制限
(1) 医師若しくは歯科医師が自ら使用し、又はこれらの者の処方せん若しくは指示によつて使用することを目的として供給される医薬品については、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告は行わないものとする。
(2) 医師、歯科医師、はり師等医療関係者が自ら使用することを目的として供給される医療用具で、一般人が使用するおそれのないものを除き、一般人が使用した場合に保健衛生上の危害が発生するおそれのあるものについても(1)と同様にするものとする。
6 一般向広告における効能効果についての表現の制限
医師又は歯科医師の診断若しくは治療によらなければ一般的に治癒が期待できない疾患について、医師又は歯科医師の診断若しくは治療によることなく治癒ができるかの表現は、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告に使用しないものとする。
また、薬事法(昭和35年8月10日、法律第145号)で次の条文がある。
(誇大広告等)
第66条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
(特定疾病用の医薬品の広告の制限)
第67条 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品であつて、医師又は歯科医師の指導のもとに使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、政令で、医薬品を指定し、その医薬品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
上記の条文で解りやすいように医師の部分にハイライトを引いた。それでもう一度、医師の部分を注目して一読して頂きたい。
職業の一つである医師が何故、敢えて条文に登場するのか・・・?
この答えは薬事における医師の立ち位置で明確になる。
医師の言葉や行動が患者に対する影響力が大きいということである。
つまり、「医者の言葉は信用され易い」という前提を法律が示唆している・・・。
そこで、敢えて、医師という職種をわざわざ特記して書いている。
現場に視線を移すと・・・販売の立場では、何とかして売りたい。
その訴求において、「医師」というブランドの信頼力は強い。
巷で、化粧品の販売員が白衣を着て売ること、健康食品で医師が開発提携したことを示唆すること、医師の論文をリンクで貼ること・・・
販売する業者は、法の禁じ手を抜ける為に日々様々な訴求を考えている。
このような背景があるなか、今回の医師法違反での逮捕が、業界に警鐘を鳴らす一つの事件として、改めて広告を見直すヒントになることを強く願う。
業者は、「医師」ではなく、「自社」ブランドを確立する必要があり、消費者は、あたかも医師が保証しているかのような広告を信じるべきではない。インターネットの世界ではより一層、慎重でありたい。
・・・医者の保証表現に騙されていませんか?
・・・あなたが見ている情報に偽医者はいませんか?
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- 執筆者紹介 吉田武史氏
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