医薬品の製造や品質保証に携わると、必ず耳にするのが「GMP」という言葉です。名前は知っていても、法令上どのように位置づけられているか、現場でどのような基準を求められているのかを整理できている方は多くないかもしれません。
本記事では、GMPの定義と三原則を法令の条文に沿って解説します。あわせて2021年8月に施行された改正GMP省令のポイント、GMP調査の流れ、医薬部外品や食品・化粧品のGMPとの違いまで、実務で押さえておきたい範囲をまとめました。
※本記事は、2026年9月1日現在の情報をもとに記載しています。
GMPとは?定義と基礎知識
GMPとは、医薬品や医薬部外品の製造所における製造管理・品質管理の基準です。英語の「Good Manufacturing Practice」の略で、日本では「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第179号、通称GMP省令)として定められています。
GMP省令は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第14条第2項第4号に規定する「厚生労働省令で定める基準」を具体化したものです。
製造所の製造管理および品質管理の方法がこの基準に適合していると認められない場合、原則として製造販売承認を受けることはできません。つまりGMPへの適合は、医薬品を製造販売するための前提条件といえます。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律|e-Gov法令検索医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令|e-Gov法令検索
GMPが求められる背景
GMPが現在の形に整えられた背景には、国際的な基準との整合を図ってきた経緯があります。
厚生労働省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)および都道府県は、2014年7月から医薬品査察協定・医薬品査察協同スキーム(PIC/S)に加盟しています。PIC/SのGMPガイドラインは国際標準として位置づけられており、厚生労働省は2012年2月の事務連絡でその活用を推進してきました。
医薬品の原薬や製剤の供給は、国境をまたいで行われています。そのため、GMPガイドラインの改訂に合わせて、日本もこうした国際的な基準に整合させていく必要があります。2021年には、これらの改訂内容や研究成果を踏まえたGMP省令の改正が行われました。
PIC/S総会とセミナーが、2019年に初めて日本で開催されます|厚生労働省医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正について(令和3年4月28日)|厚生労働省
GMPの根拠法令と定められた基準
GMPの法的な根拠は、薬機法とGMP省令の二層構造になっています。法第14条第2項第4号が基準への適合を承認要件として定め、その中身をGMP省令が規定するという関係です。
GMP省令は、法第14条第1項に規定する医薬品または医薬部外品のうち、製造管理または品質管理の方法が承認要件とされるものに適用されます。また輸出用の医薬品等についても、法第80条第1項に基づき、GMP省令の規定に従った製造管理・品質管理を行うことが求められます。
GMPの三原則とは?
GMPの運用において規範となる三原則は以下のとおりです。なお、「三原則」という言葉自体は薬機法やGMP省令に明記された用語ではなく、業界団体や自治体等の解説で広く使われています。
- 人為的な誤りを最小限にすること
- 汚染および品質低下を防止すること
- 高い品質を保証するシステムを設計すること
ここからは、GMPの三原則の詳細について解説します。
①人為的な誤りを最小限にすること
GMP省令は、作業を担当者の記憶や経験に委ねず、文書による指示と記録を軸に管理することを求めています。製造管理では、製造部門に製造指図書を作成させ、製造部門の責任者がこれに基づいて製造作業に従事する職員に指示を行わせなければなりません(第10条)。製造作業は、この製造指図書に基づいて行うことが求められています。
第19条では、製造・品質関連業務に従事する職員への教育訓練を計画的に実施し、その実効性を定期的に評価することを定めています。第20条で定める文書と記録の管理は、誰がいつ何を行ったかを追跡できる状態を保ち、ミスの発見や再発防止の土台になります。
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令|e-Gov法令検索
②汚染および品質低下を防止すること
製造業者等は、製造中に別の薬の成分が混ざってしまう「交叉汚染」を防ぐために、製造手順などについて必要な対策をとらなければなりません(第8条の2)。
第9条では、作業室の構造や設備の要件を規定しています。以下の場合は専用の作業室が必要であり、空気処理システムを別系統にする等の当該製品等の漏出を防止する適切な措置が求められます。
- 飛散しやすく、微量で過敏症反応を示す製品等を取り扱う場合
- 他の製品に混ざると重大な影響を与えるおそれのある製品(強い薬理作用または毒性があるものを含む)を扱っていて、しかも交叉汚染を防ぐ十分な対策がとれない場合
医薬品を取り扱う作業室でGMP省令が適用されない物品の製造作業を行うことは原則として禁じられており、検証された工程・清浄化による交叉汚染防止措置がとられない限り認められません(第9条第2項)。特に、飛散しやすく過敏症反応を示す物質や、人体への使用を目的とせず薬理作用・毒性が不明な物品を扱う場合は、この例外は適用されません。
無菌医薬品の製造管理では、さらに厳しい要件が追加されます。第23条では、無菌医薬品を製造する製造所の構造設備について定めています。
- 清浄度を維持管理できる作業室の構造
- 調製室・充塡室の専用化…など
第24条では、通常の管理業務(第10条)に加え、次の製造管理が求められています。
- 原料・製品の微生物管理項目の設定
- 職員の立入り制限や体調不良時の申告…など
職員の衛生管理は第10条第8号でも規定されており、設備面と運用面の両輪で汚染を防ぐ設計になっています。
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令|e-Gov法令検索
③高い品質を保証するシステムを設計すること
2021年の改正では、この原則が大きく強化されました。
第3条の3では、製造業者等に実効性のある医薬品品質システムの構築を求めています。品質方針を文書で定め、品質目標を設定し、製造所の全組織と職員に周知したうえで、必要な資源を配分することが必要です。定期的に医薬品品質システムを照査し、その結果に基づいて所要の措置を講じることも求められます。
第3条の4では、品質リスクマネジメントを活用して医薬品品質システムを構築することが定められました。
組織面では、品質部門は製造部門から独立していなければなりません(第4条第2項)。加えて製品品質の照査(第11条の3)、バリデーション(第13条)、自己点検(第18条)といった仕組みが求められます。これらは、工程が期待どおり機能しているかを継続的に検証し、改善につなげるための規定です。
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令|e-Gov法令検索医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正について(令和3年4月28日)|厚生労働省
【2021年】改正GMP省令のポイント
現在のGMP省令の姿を理解するうえで欠かせないのが、2021年の改正です。改正省令(令和3年厚生労働省令第90号)は2021年4月28日に公布され、同年8月1日に施行されました。
国際的な基準との整合を図る観点から、医薬品品質システムや品質リスクマネジメントの規定が新設されたほか、文書体系そのものが見直されています。
「基準書」から「手順書」への統合と運用
実務上の変化として大きいのが、文書の体系が整理された点です。改正前のGMP省令第8条は、衛生管理基準書、製造管理基準書、品質管理基準書という3つの基準書の作成を求めていました。改正後は、これらが第8条第1項の「手順書」に統合され、17項目の手順を記載した文書を製造所ごとに作成・備置することとされています。
ただし、すでに作成されて製造所に備え置かれている各基準書は、改正後の第8条第1項第1号から第3号までの手順を記載した文書とみなされます。形式的な名称変更のみを目的とした改廃までは求められません。
あわせて、文書および記録の信頼性、いわゆるデータインテグリティの確保が第20条第2項に明文化されました。欠落や不正確・不整合がないよう継続的に管理し、判明した場合は原因を究明して是正措置・予防措置をとることが求められます。
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正について(令和3年4月28日)|厚生労働省
薬機法改正(2026年5月施行)とGMP適合性調査の見直し
薬機法等の一部改正法(令和7年法律第37号)は2025年5月21日に公布され、施行日が規定ごとに段階的に設定されました。このうち2026年5月1日施行分に対応する関係省令の整備省令(令和7年厚生労働省令第117号)が、2025年11月28日に公布されています。
整備省令が改正した22本の省令には、GMP省令も含まれます。
厚生労働省が2024年10月31日の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会に示した案では、品目ごとの定期GMP調査の頻度を「3年に1度」に変更するとされました。一方で、製造所ごとに3段階でリスク評価を行い、リスクが低い製造所で製造される品目は調査不要としています。
このほか、2024年10月時点では、後発品の新規承認時適合性調査の一部について、調査主体を都道府県からPMDAに見直す案が示されていました。
厚生労働省は当初、都道府県が調査主体となっている品目もPMDAが調査できる案を検討していました。しかし、都道府県から人員削減への懸念が相次いだため、以下の修正案が示されています。
- 後発品の新規承認時適合性調査は、新規成分の製剤に限定して調査主体をPMDAに変更
- その後の定期の適合性調査は引き続き都道府県が実施
これらの対応については、その後の政令・省令による制度化の内容を確認する必要があります。
あわせて読みたい記事はこちら【薬機法一部改正法2026年5月施行】関係省令の整備省令公布|薬事日報【厚科審制度部会】GMP調査「3年に1度」‐後発品新規はPMDA|薬事日報
GMP調査の実務フロー
厚生労働省は、全国の調査当局が共通の要領で調査を行えるよう「GMP調査要領」を定めています。GMP調査要領は2024年3月29日に制定、2026年3月19日付けで一部改正され、同年4月1日から改正後の要領が適用されています。
ここでは、GMP調査の種類と進み方を解説します。
調査の種類と実施の流れ
GMP調査は大きく「適合性調査・確認」と「立入検査等」に分けられます。適合性調査・確認は、製造販売承認や基準確認証の交付などに関連して事業者が申請して受けるもので、次の5種類に分類されます。
- 製造販売承認前適合性調査
- 製造販売承認後等適合性調査
- 区分適合性調査
- 変更計画適合性確認
- 輸出用医薬品等の製造に係る適合性調査
立入検査等は、定期的に遵守状況を監視指導する通常調査と、回収や苦情等を受けて行う特別調査に分けられます。
GMP調査は実地調査を原則としています。実地調査の流れは、おおむね次のとおりです。
| 1 | 調査通知書を提示し、立入りについての理解を得る。 |
|---|---|
| 2 | 調査の目的や手順を確認する。 |
| 3 | 調査を実施する。 |
| 4 | 調査終了時に講評を行い、不備と判断した事項を伝達する。 |
| 5 | 調査最終日から原則10業務日以内にGMP調査指摘事項書が交付される(不備事項は重度・中程度・軽度に分類)。 |
| 6 | 事業者が改善計画書または改善結果報告書を提出する。 |
調査当局は、リスク評価に基づいた上で書面調査も活用します。また、リスクの高い製造所については、原則、年1回以上の無通告立入検査も行われます。
リスクベースによる調査頻度の見直し
リスク評価で考慮すべき事項として、品目の種類、工程内容、製造品目数などの製造所の状況、変更履歴、製造所履歴、品目履歴が挙げられています。前回の調査結果や回収・品質情報の有無も判断材料のひとつです。
2025年9月には、GMP調査で不適合と判定した場合の対応も強化されました。調査当局が製造業者等にGMP調査不適合連絡書を交付するとともに、その内容をPMDAのウェブサイトに公表する取扱いが周知されています。連絡書の公表後に改善が確認され適合と判定された場合も、同サイトに公表されます。
GMP調査要領の制定について(令和6年3月29日)|厚生労働省あわせて読みたい記事はこちら【厚労省】GMP不適合は連絡書‐PMDAサイトに公表|薬事日報
医薬部外品GMP・食品GMP・化粧品GMPとの違い
GMPという言葉は医薬品以外の分野でも使われますが、法的な位置づけや管理主体は分野ごとに異なります。
医薬品と指定医薬部外品のGMPは、省令に基づく義務です。一方、食品GMPは対象となる食品・制度によって法的位置づけが異なり、化粧品GMPは国際規格に基づく任意の取り組みです。この違いを混同すると、要求水準の理解を誤ることになります。
| 区分 | 主な根拠 | 法的位置づけ | 管理主体・特徴 |
|---|---|---|---|
| 医薬品GMP | ・薬機法(第14条第2項第4号) ・GMP省令(第2章) |
製造販売承認の要件(義務) | ・製造管理者の監督下に製造部門と品質部門を設置 ・医薬品品質システムや品質リスクマネジメントを要求 |
| 医薬部外品GMP | GMP省令(第3章) | 製造販売承認の要件(義務、対象は厚生労働大臣が指定する医薬部外品) | ・責任技術者の監督下に製造部門と品質部門を設置 ・医薬品GMPに準じた構成だが、安定性モニタリング等は非適用 |
| 食品GMP(錠剤、カプセル剤等食品) | 消費者庁「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」 | 任意(自主的な取り組みを推奨) | ・総括責任者、製造管理責任者、品質管理責任者を設置 ・2024年12月の改正で微生物等関連原材料の同等性/同質性に関する指針を追加 |
| 化粧品GMP | ISO22716(国際規格) | 任意(民間の自主基準) | ・日本化粧品工業連合会が2008年に適正製造規範の自主基準として採用 ・輸出時に求められる場合がある |
機能性表示食品のうち、天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品については、製造・加工等におけるGMP基準が内閣府令・告示に位置づけられ、経過措置を経て2026年9月1日から適用されています。
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令|e-Gov法令検索「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針(ガイドライン)」及び「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」について|消費者庁(化粧品GMP)とは?背景やメリットをご紹介します|JMAQAあわせて読みたい記事はこちら【機能性食品検討会】サプリにGMP義務化へ‐品質管理「推奨」から強化|薬事日報【消費者庁部会】紅麹問題でGMP指針改正‐微生物原材料の食品対象|薬事日報
GMP違反事例から学ぶ注意点
PMDAは、GMP/GCTP調査で確認された指摘事例を「オレンジレター」として公表しています。実際の事例を知ることは、自社の管理体制を点検する手がかりになるでしょう。
PMDAオレンジレターに見る主な違反パターン
2026年3月には、医薬品製造設備で薬理作用・毒性が不明な工業用製品を製造していた事例が公表されました。
また、2026年6月には、不適切なリテストを繰り返し、原薬の有効期間経過後も使用可能とする運用手順を定めている製造所が散見される実態が指摘されました。これを受けてPMDAは「リテストは有効期間を経過した原薬を使用するための手段ではない」と明記しています。
2026年8月に公表されたオレンジレターでは、国内の非無菌製剤製造所における試験結果の取扱いが問題となりました。具体的には、製品試験で規格外の結果が頻発していたにもかかわらず、原因究明や品質への影響評価を行わないまま、合格データが得られるまで再試験を繰り返していたとのことです。さらに、再試験前の不適合結果を記録から除外して適合結果のみを採用する運用が現場で慣例化していた実態も明らかになりました。
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経営陣の品質文化と法令遵守体制
医薬品製造管理者が問題を把握しながら製造業者(経営陣)へ報告しなければ、意見具申や自浄作用の機能が不全に陥りかねません。そのため、PMDAは医薬品製造業者に対し、解決されていない品質上の課題に向き合い、継続的な改善につなげる品質文化(クオリティカルチャー)の点検を促しています。
これを受けて、各製薬企業には自社の品質マネジメントシステムの運用状況と品質文化の定着度を改めて点検するとともに、医薬品製造管理者が問題を認識した際に滞りなく意見具申できる組織体制を整えることが求められています。
品質上の課題を放置することは、組織全体の機能不全を招き、企業の存続に関わる重大な危機へと発展しかねません。品質問題の早期発見と持続的な改善を実現するためにも、経営陣による積極的なリーダーシップの発揮が不可欠です。
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まとめ
GMPは、薬機法第14条第2項第4号を根拠とし、GMP省令によって具体化された製造管理・品質管理の基準です。「人為的ミスの防止」「汚染および品質低下の防止」「高い品質を保証するシステムの設計」という三原則が、各条文の背景にあります。
2021年8月施行の改正では、医薬品品質システムやデータインテグリティの規定が加わりました。また、2026年5月1日の薬機法改正施行に伴う関係省令の整備省令は、2025年11月28日に公布されました。
GMPに関する制度は、国際的な基準との整合を図りながら、今後も見直されていくものと考えられます。医薬部外品や食品、化粧品のGMPとは法的位置づけが異なる点も含め、一次資料を用いて最新の内容を確認する習慣を持ちたいところです。
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