インド製薬会社がGE薬やAPIに関し、国際的な事業展開をしているが、その背景に高い収益性がある。以下、その概要を示す。
2006年度 | 2005年度 | ||||
売 上 | 税前利益 | 利益率 | 売 上 | 税前利益 | |
Cipra | 35,720 | 8,008 | 22.4 | 28,858 | 7,094 |
Ranbaxy | 61,915 | 9,389 | 15.1 | 53,676 | 3,727 |
Lupin | 20,289 | 3,967 | 19.5 | 16,610 | 2,302 |
Nicholas Piramal | 16,398 | 2,224 | 13.5 | 14,494 | 1,842 |
Zydus Cadila | 18,747 | 2,739 | 14.6 | 15,078 | 1,768 |
Wockhardt | 11,563 | 2,526 | 21.8 | 9,850 | 2,654 |
Sun | 22,372 | 8,233 | 36.8 | 17,371 | 5,969 |
Dr.Reddy’s | 68,417 | 17,716 | 25.8 | 24,831 | 4,274 |
Glenmark | 12,069 | 3,610 | 29.9 | 6,952 | 1,120 |
Torrent | 13,011 | 1,090 | 8.3 | 9,685 | 777 |
単位:100万インドルピー |
以上のように、大手といわれる企業間でかなりの差がある。一般的には、製剤とAPIの事業構成において、製剤比率の高い企業(Cipra 9:1、Sun 8:2等)が、また、Ranbaxyを除き、海外比率の高い企業(Cipra 約50%、Dr. Reddy’s 30~40%等)が高収益を上げているといえる。
インドの製薬大手は、国内外でのM&Aを通じて規模の拡大を図ってきた。そして、彼らの最大のターゲットは米国市場であるが、そこでの製剤事業についても、最近、価格競争の激化がかれらの体力を消耗してきており、国内市場への回帰の動きも生じている。
また、インド国内での物質特許制の2005年からの完全施行にともない、新薬の開発のための投資が増大している。たとえば、Sun などは、高収益を背景に、ここ数年売り上げの10%(2006年度は対売上の13%)を超える研究開発投資をしており、国内の中堅製薬企業並みである。LupinやZydus Cadila なども売り上げの6~8%程度を研究開発に投じている。
既にメールボックス出願の物質特許の審査が始まっており(インド企業は多くの出願をしている)、数年内に、独占販売権を認められた製品が上市される可能性もある。
今後、インドの製薬大手が、これまでのような収益を確保できるか予断を許さないが、国内市場は今後とも拡大することは間違いない。
特に中間所得層(年収で150万から300万クラス)の増大や医療体制の充実は、高薬価の製品の市場拡大が見込まれ、余程大きな経営上のミスをしない限り、インドの製薬大手の収益性は持続するものと思われる。
連載 インド薬業事情
- 「インド薬業事情」連載終了
- 第21回 インド製薬会社の収益性
- 第20回 インドの医薬品の品質
- 第19回 インドのAPIビジネス―日本企業の対応
- 第18回 インドの医薬ビジネスサポート業―3 (研究支援)
- 第17回 インドの医薬ビジネスサポート業―2 (受託製造)
- 第16回 インドの医薬ビジネスサポート業―1 (CRO)
- 第15回 インド製薬会社の海外展開
- 第14回 インド製薬会社の強みと弱み
- 第13回 インドの医薬品市場―主要企業と成長
- 第12回 インドの医薬品市場の概要―その特性
- 第11回 インド高裁によるノバルティスの請求棄却に関して [緊急掲載]
- 第10回 インドの医療供給体制
- 第9回 インドの医薬品安全性対策
- 第8回 インド製薬会社のMR
- 第7回 インドの医薬品マーケティング戦略
- 第6回 インドの医薬品流通
- 第5回 インドの薬価
- 第4回 インドでの医薬ビジネスに関する法規制
- 第3回 インドの医薬品と知的財産権
- 第2回 インドの医薬品承認制度
- 執筆者紹介 黒木俊光氏(トレント・ファーマ社長)
- 第1回 物質特許制度の導入とインド企業の新薬開発
- 執筆者紹介 川端一博氏(ザイダスファーマ社長)
- 「インド薬業事情」連載開始!